坂本真綾『30 minutes night flight』



前作『夕凪LOOP』は正直微妙な評価でした。世評もまたしかり。
それだけに今回のアルバムは今後の真綾さんを左右するものになると感じていました。
で、期待半分不安半分、いや期待1割不安9割くらいでプレイボタンを押したわけです。


1曲目、「30 minutes night flight」。
イントロを聴いて「おっ」と思ったのも束の間、真綾さんのボーカルを聴いて愕然。
「声が死んでいる……」
声は打ち込み音に完全に埋もれ、見る影もなく。
「僕たちが恋をする理由」、きっと「指輪」のときのように心と涙腺を揺さぶられるはずだったのに。
「ユニバース」、もっと広く遠く高い夜空を見たかったのに、プラネタリウムの天井を突き破ることはありませんでした。
『夕凪〜』に比べれば詞も曲も格段に上だと思います。でも真綾さんのボーカルが全てぶち壊してしまってるのです。
唯一「セツナ」だけはボーカルに生気を感じました。それでも繰り返し聴こうと思うトラックは一つもなかったです。


それなりにまとまりはあるので、普通に街中や喫茶店なんかで流れていれば心地よいのかもしれません。
ただ、そんな普通の音楽だったら、はっきり言って坂本真綾である必要は全くないのです。
菅野さんに戻れとは言いません。けど、もっと突き抜けた、変なことをやってほしいのです。
今回のアルバムにしても、バックのメンバー実はかなり豪華です。
だったらその連中の個性を生かしたアプローチも取れたはずなのです。
例えば4曲目に参加した塩谷哲氏のピアノをもっとフューチャーしてジャズにしてしまうとか。
でも某巨大掲示板をはじめ、このアルバムは絶賛されてます。きっと今後もこういう路線なんでしょう。
筆者にはそれが解せません。


これを聴き終わったとき、無性に『Lucy』が恋しくなりました。そして聴いてみました。
そこにあったのは、今回のアルバムになかった、そして欲しかった生きたボーカル。
悲しい現実ですが、それでもきっと次のCDも買ってしまうのでしょう……やはりまだ見捨てたくないですから。