NHK技研公開2008


未来の放送技術を研究開発している「NHK放送技術研究所」。その成果が年1度お披露目される「技研公開」に行ってきました。
まず目を引いたのが3300万画素のカラー撮影ができるカメラ。

3300万画素といってもピンと来ませんが、現在のフルHDハイビジョンが水平1920×垂直1080の約200万画素。このカメラは水平7680×垂直4320と縦横がそれぞれ4倍の画素数を持ちます。これを切り出したものが4k2k(3840×2160)のディスプレイに表示されていたのですが、数メートル先の新聞の細かい文字までくっきり読める精細さに驚かされました。
さらに「スーパーハイビジョン家庭視聴イメージ」と題した、4K2Kの56インチ液晶4枚で構成された大型ディスプレイと数本のトールボーイスピーカーを用いた22.2マルチチャンネルシステムを体験できるコーナーも。22.2チャンネルとなるとどんな大仰なシステムかと思いましたが、背の高いトールボーイスピーカーに上層・中層・下層の3チャンネルを一体化させており、意外とコンパクトでした。
極めつけは450インチスクリーン&22.2チャンネルによるスーパーハイビジョンシアター。日本遺産と題された北海道の冬景色の映像には息をのむばかり。音響的にも現在の5.1チャンネルでは再現できない高さ方向の音移動が体感でき、今までにない臨場感でした。
スーパーハイビジョン関係では、広ダイナミックレンジのプロジェクターも展示。ビクターと共同開発した物で、今回は静止画のみでしたが、まさに漆黒といえるほどの黒の深さが印象的でした。
テレビ関係で面白かったのは「CurioView」というシステム。これは視聴している番組のシーンに関連した映像などを自動的に検索して表示してくれるというもの。例えばドラマで西田敏行が出演しているシーンが流れているとすると、そのシーンより前に西田敏行が出演しているシーンや西田敏行のホームページがリアルタイムで自動的に画面横に表示されるのです。
これは番組が持っているメタデータ(文字放送の情報など)を元にしているほか、メタデータのないスポーツの生中継などでは、画面の切り替わりを元に判断して情報を提供するそうです。例えばホームランを打った場合、投手が投げる→打者が打つ→打球を追う→スタンドインする→ダイヤモンドをランナーが回る、というように映像がパターン化されていますから、そういったパターンをシステムに記憶させておいて、ホームランが出たときにその試合の全ホームランがすぐさま表示されるようにするという仕組み。
ただ、放送データをどこから読み出すかとか(放送局のアーカイブから読み出す方法もあるそうですが、ネットワークのトラフィックが問題になるそう)、著作権や出演料(放送局をまたがっての情報提供は難しい……)など課題も多いそうです。
テレビ以外では次世代アーカイブ用として薄型光ディスクの展示もありました。

写真中央のペラペラした銀色のものがそれです。薄さは0.1ミリ。現在のブルーレイディスクの12分の1の薄さですが、これで容量は同じ。薄くすることで、ディスクの高速回転が可能となり、記録速度の向上につながるそうです。
音響関係ではエラストマーを使った薄型スピーカーのデモも。

薄い膜を使ったスピーカーというとコンデンサー型(エレスタット)を連想しますが、コンデンサー型が膜の振動で音を出すのに対し、これはエラストマーの伸縮によって音を出すとのことです。音自体はなんともか細くて弱々しいものでしたが、スピーカーの形状を自在に作れるのがメリットだそうです。
これら公開されている技術のいくつかは近い将来実用化されることでしょう。中には民生用にそこまで必要かと思うようなものもあります。例えば将来のスーパーハイビジョンのフル解像度である水平7680×垂直4320ほどの画素数が必要なディスプレイはほとんどの一般家庭では大きすぎて設置できないと思います。一方で研究等の学術的な用途ではより精細な映像をアーカイブすることが将来への遺産となるはずです。また、こうした技術の蓄積が将来民生用製品のコスト低下や性能向上につながることも期待されます。
この「技研公開」、明日25日まで世田谷・砧にある「NHK放送技術研究所」で行われています。とりあえず、450インチシアターだけでも見物ですので、お暇な方は是非。ちなみに小田急線・成城学園前駅から直通臨時バスが出ています。
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