『Soundgirl-音響少女-』

昨年、ヘッドホンと萌えっ娘をコラボレートした『新・萌えるヘッドホン読本』が発行され、大ヒットしたのは記憶に新しいところです。ヘッドホンのイベントは盛況のようですし、おまけに「けいおん!」効果でAKGのK701が飛ぶように?売れるなど、ヘッドホンにお金をかける文化というのは今やすっかり定着した感があります。
ヘッドホンの場合、組み合わせをあまり考えなくてよいのと(それこそiPodとヘッドホンでOK)、ハイエンドクラスのヘッドホンでも数万出せば買えるという取っつきやすさがあります。しかし、通常のスピーカーを使ったオーディオはそうもいきません。プレーヤー・アンプ・スピーカーの無数の組み合わせから自分の好みを見つけ出す難しさ、そして数万からハイエンドであれば家1軒買えるほどの価格帯の広さがネックになるからです。しかも本来参考になるはずのオーディオ雑誌は試聴ソースがクラシックやジャズばかりということもあり、アニソン好き&スピーカーリスニング派向けの本を待ち望んでいました。
そんな状況を打破すべく登場したのが『Soundgirl-音響少女-』です。著者は『新・萌えるヘッドホン読本』と同じく岩井喬氏。価格的にも初心者に手が出る6つのシステムが取り上げられています。ソースも前回と同じく『Pure-AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』を始めとして奈々さんや真綾さん、May'nさんなど、アニソン好きにはお馴染みのソースをチョイス。美麗な女の子のイラストと相まって見て楽しく読んで参考になる内容となっています。
さらに今回は委託先の「コミックとらのあな」秋葉原本店にて連動イベントが開催されています。掲載されているオーディオシステムが実際に展示されており、普段オーディオショップでは躊躇うようなソースでもここでは気兼ねなく試聴することができます*1。場内の雰囲気や機材の詳細については「AV Watch」「Phile-web」の当該記事を見ていただくのが良いかと思いますが、今回実際に参加してきたので簡単にレビューしたいと思います。
筆者が参加したのは「4システム試聴」。著者の岩井喬氏の解説付きで、ケンウッド・ソニータンジェントラックスマンの4つのシステムを順番に聴き比べができるというものです。使用したソースは岩井氏の評論ではおなじみの『Pure-AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』から「POWDER SNOW」を中心に、今話題の「けいおん!」・「マクロスF」から「ライオン」・アイマス川井憲次・モンハンのサントラ・メロキュアなど、幅広くセレクトされていました。ちなみにケーブル等アクセサリー類は全てアコースティックリバイブ社の製品で固められていました*2

(1)KENWOOD K series
デジアンなのですが、意外にもアナログチックな音がします。ボーカルのきつさもないのですが、響きすぎてエコーがかかったようになっていました。会場の都合もあったのかもしれませんが、ちょっとお化粧が厚すぎるなぁと思いました。ボーカルはスピーカーよりやや前に定位します。「Clear A」という小音量向けのモードがあり、ONにすると音の質感が明らかに良くなりました。ただ、OFFのほうが低音の押し出しが元気なので、ソースで使い分けるといいのかもしれません。残念だったのが、アンプの音をスピーカーが受け切れてなく音がごちゃついてしまっていたことで、解像度の高いスピーカーを使えばまた違った印象になったかもしれません。

(2)SONY System501
これもデジアンです。KENWOODに比べるとストレートに音を再生します。良く言えば原音には忠実、悪く言えば味も素っ気もないです。音が前に出てこないので個人的には物足りなく感じました。どちらかというとクラシックやジャズ向けのシステムでしょうね。

(3)tangent HiFi200 + Clarity4
前2つと明らかに次元が違います。これを聴いちゃうと前の2つは所詮ミニコンポに毛が生えた程度なんだなぁと思わされます。方式はオーソドックスなアナログアンプ。ゆったりとした中低音がもたらす弦や声の色気、そして何とも言えない余韻は日本のメーカーにはないものです。ボーカルが前に出てくるので、Suaraさんがあたかも目の前で歌ってくれているような気分になりました。奈々さんやみのりんも良さそうですが、これで丹下桜さんを聴いたらかなりハマりそうな気がします。個人的にはかなり気に入ったシステムです。

(4)LUXMAN NeoClassico
今回のシステムでは一番高価、そして唯一の真空管アンプです。真空管というと穏やかな音のイメージがありますが、このシステムはデジアン顔負けなほどに解像度が高く、しかもSONYと違ってちゃんと音の押し出しもあります。ブラインドで聴かせたらtangentが球でLUXMANが石だと勘違いする人もいるのではないでしょうか。音の傾向としては中高音寄りで低音は適度な量感で締まっており、奥行きは後ろに拡がりました。個人的には高音、特にサ行のきつさが気になりましたが、これくらいのほうが好きだという人も多いと思います。得てして価格と音が比例しないのがオーディオだったりするのですが、今回は一番高価なこのシステムがオーディオ的には一番良い音だったとおもいます。

今回30人近くが参加していたのですが、うち実際に家でオーディオを組んでいるという人は半数ほどでした。ということは、残りの半数の人は、今までオーディオに興味があってもきっかけがなかった人と考えられるでしょう。そうした人にとって、今回の企画はまさにうってつけのものです。実際試聴後に「こんなの聴いたら家で聴けなくなる」と言ってる人もいました。イベントはこの週末まで開催されているので、興味とお時間のある方は是非参加されることをおすすめします。
アニソンもいい音で聴けばもっと楽しくなるという思いは筆者もずっと持っていて、何とか啓蒙する方法はないものかと常々思っていただけに、今回の企画はまさに我が意を得たりという感があります。続編も予定しているようですし、今後の展開が非常に楽しみです。

*1:もっとも筆者はダイナ5555の上層階で奈々さん聴いたことありますし、実際は気兼ねする必要なんてないんですがねw

*2:アコリバの社員の方もスタッフとして参加されてました。